私が勤めている介護施設で見かけたことです。
利用者さんがヨーグルトに醤油をかけていました。
「うわ!」と思わず声が出そうになりましたが、ちょっと待ってください。
その方にとっては、豆腐に醤油をかけている、ごく自然な行動だったのです。
認知症があり、なおかつ塩分制限がある方のサポートは、簡単ではありません。
でも、「なぜそうなるのか」を知るだけで、関わり方がやさしく変わります。
今回は、自身が現場で感じてきたことをもとに、
認知症と塩分制限を抱える方への、周囲にできるサポートをまとめました。
参考になる部分があれば幸いです。
なぜ食べ物を誤認してしまうのか

私たちが「これはヨーグルトだ」とわかるのは、
見た目・におい・過去の記憶を瞬時に組み合わせて判断しているからです。
でも認知症になると、脳のその「組み合わせる機能」がうまく働かなくなります。
ヨーグルトを例にすると、
- 白くてやわらかい
- 冷たい
- パックに入っている
これらの特徴は、豆腐とほぼ同じです。
しかも豆腐は昔から食卓に馴染み深い食べ物。
だから醤油をかけてしまうのは、その方にとっては正しい行動です。
「豆腐があるから醤油をかけた」——それだけのことなのです。
責めるのではなく、まずそういう仕組みが起きているのだと知ることが、
サポートの第一歩になると思います。
やりがちなNG対応

悪意があってやっているわけではないけれど、
知らないがゆえにやってしまいがちな対応があります。
「違います!」と強く否定する
「それはヨーグルトですよ!醤油じゃないです!」
と訂正しても、本人には伝わりにくいです。
むしろ突然怒られたという感情だけが残って、
食事の時間が怖いもの・嫌なものになってしまう可能性があります。
「さっきも言ったでしょ」と繰り返しを責める
何度も同じことが起きると、つい言ってしまいがちです。
でも本人は「さっき」の記憶がないので、
責められている理由がわからず、ただ混乱するだけです。
急いで手を止めさせる・取り上げる
いきなり手を止めたり、食器を取り上げたりすると、
驚き・怒り・不安につながります。
食事拒否が起きやすくなる原因にもなります。
減塩を維持しながら食事を楽しめる工夫

では、実際にどんな工夫ができるのでしょうか。
①最初から調味料を食卓に置かない
「取り上げる」のではなく、最初からない状態にしておくのがポイントです。
ないものにはかけられないので、自然に塩分を抑えられます。
しょうゆが必要な場面では、その時にしょうゆを渡す・かけてあげるとスムーズです。
怒ることなく、穏やかに塩分管理ができます。
②器と食べ物の色を変える
白い茶碗に白いご飯を盛ると、境目がわからず認識しにくくなります。
これは視力の問題ではなく、脳が輪郭や境界線を処理しにくくなっているためです。
色のある器に変えるだけで、「この食べ物は〇〇だ」とわかりやすくなります。
器を変えるだけという、シンプルながら効果的な工夫です。
③だしをしっかりきかせて満足感を出す
認知症が進むと味覚も鈍くなりやすいです。
昆布やかつおのだしをしっかりきかせたり、
酸味や甘みで補ったりすることで、満足感のある食事になります。
難しい部分は、宅配弁当などを利用するのも手です。
④食べ慣れた「昔ながらの料理」を選ぶ
新しい食べ物よりも、
長年親しんできた料理のほうが安心して食べられることが多いです。
味の記憶が残っている料理を選ぶことで、食事がスムーズになります。
⑤一緒に食べる
誰かと一緒に食べるというのは、それだけで食欲や安心感につながります。
孤食より共食——これは認知症の方に限らず、食事において大切なことですね。

大切なのは「正しさ」より「安心感」

塩分制限は健康を守るために必要なことです。
でも、食事は栄養を摂るだけのものではありません。
美味しい、楽しい、安心する——そういった感情も、食事には欠かせない要素です。
正しさを押しつけるより、その方が安心して食卓に向かえる環境をつくること。
それが、認知症と塩分制限を抱える方への、いちばんやさしい関わり方なのかと感じています。

まとめ
今回は、認知症で塩分制限がある方に対して周りができることを考えました。
- 責めるのではなく環境に配慮することが大切
- 否定・叱責・取り上げは逆効果になりやすい
- 一緒に食べる時間を大切にする
減塩生活は、認知症の方にとってもあきらめなくていいものです。
周りの工夫と関わり方次第で、食事の時間をより豊かにすることができます。
そして、周りの方も頑張りすぎないことが大事です。
介護は1人で抱えてやることではありません。
行政などのサポートをしっかり活用してくださいね♬





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